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高車(こうしゃ)の伝説


高車(こうしゃ)の伝説 on Vimeo

◆高車(こうしゃ)の伝説◆
(「伝説」の編詩・作曲)

 

名もなき無数の星に囲まれて
目を閉じ風が吹き込む場所に恋する
高車の軌跡が砂に刻まれて
やがては消えて谷にたどり着いた時

突然噴(ふき)出した歌と調べに
滴り落つる涙が闇夜を切り分ける
突然噴(ふき)出した歌と調べに
滴り落つる涙が闇夜を切り分ける

名もなき無数の星に囲まれて
目を閉じ風が吹き込む場所に恋する
高車の軌跡が砂に刻まれて
やがて消え去り君の歌となる
君の歌となる

 

編詩・作曲 2020/3/25 historyninjin
原詩 タヒル・ハムット・イズギル(ウイグル)
(詩集「聖なる儀式」ムカイダイス+河合眞編訳より)

ヒル・ハムット・イズギル氏の原詩(日本語編訳)

◆伝説◆

君が巡った場所は
恐ろしくも未だに存在する
君の前に影は落ちない
狂った夜と変態の昼
高車(こうしゃ)の軌跡が
砂に刻み込まれては消える
君を撫でた速度が
足跡が石になる
山間の谷に辿り着く
はだけた胸を覗いて
男が賛美する
目を閉じて
風が吹く場所に恋をする
君の心から噴出した一瞬が
歌と調べを 山と谷を
人間と神を隔てる
滴り落ちて固まった泪が
滑らかな砂山を作る
闇夜に浮かぶ堅固な絞首台が
ゆっくりと立ち上がり
輝く陽光の下で旋回する
群生した蒲公英(たんぽぽ)が一瞬
ホータン市の東で再び芽生える
危険な旅の果てに
君はかつてのように
天山の独峰に意味なく再び登る
君の周りに無数の
名もなき天体が現れる
一つ一つの考えが
君と完全に一致する

 

※タヒル・ハムット氏の伝説という詩を編み直して一曲の歌にしました。必ずしも原詩の表しているものではないかも知れませんが、歴史上に現れ存在し消えていった一つの国に特に焦点を当てた楽曲に仕上げました。
高車(こうしゃ)とは4世紀から6世紀にかけて,モンゴル高原の北に阿伏至羅(あふくしら)国を建てたテュルク系遊牧民のこと。
高車と呼ばれたのは,彼らが移動に使った車両の車輪が高く大きかったからであるという。
北魏等と争いながら台頭したが,柔然に従属させられ辛酸をなめる。しかし485年に高車の阿伏至羅により柔然の支配を脱し独立を果たす。が,再び力を回復した柔然やエフタルによって6世紀に滅亡した。この地上に一度独立を果たした誇り高い魂は伝説となって,今も荒野に刻まれているに違いない。
おそらく作者は,テュルク族(トルコ族)系列の先祖をもつ誇りを内に秘めたウイグルの詩人なのだろう。砂漠で満天の星(先祖)に囲まれて,高車の車輪の跡を,おそらく見たのだろう。
私は,民族の誇りを今にもち続ける,魂の自然で偉大な営みを開放しなければならないと深く心に思い刻み付ける。2020/6/7