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夏は一つの陰謀(全曲)

 
夏は一つの陰謀(全曲) on Vimeo

原詩:タヒル・ハムット・イズギル 1994/7
日本語編訳:むかいだいす 2021/8/21投稿
作曲:historyninjin 2021/8/30
録音 2021/9/12


    「夏は一つの陰謀」
(作曲者が歌っている歌詞)

私は汗まみれで
アン・セックストンを
読んでいる
浮遊する埃が
空気を追う
都会の無数の鳥に変わり
ホームへ飛んでいる
風は唾を飛ばしながら
あちこちに黴菌を
撒き散らし
君は真に生きたことがない

白い嘴の鴉ではない
赤い芝生でもない
私は第六感を信じない
それは昨日の
地下鉄で出遭った老婆が
口走ったかのように
人を欺く

二人に唯一共通するものは
恐怖
聴き慣れた鋼鉄のような
その声は
飲み物のように
骨の髄まで浸みこみ
浸みこんで凝固する

山が動くのを見る
テーマを創作することの
重要さも感じてる
海が燕の巣の上を
飛翔するのを見ている
君は私を現実に戻す
恐ろしい力
車にぶつかった人形
それは芸術と
糞の誠実さ
誠実さ

 

夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く

父が家から追い出された
時に帰る場所は
泥の
泥の
泥の寝床

昨日の雨を知らないのか
可哀そうな雨音が未だに
枝の間に響いている
己をすべての昆虫類に繋ぐべき

疑いが消えた時
それだけが
ただそれだけが私に
自身を破壊する力を
私に与えている

カシュガルのジャーミーの前で
計り売りの大麻があったのを
忘れられない
私の語るに値しない子供時代

今日の私は手を
汽車の窓から延びた
あの手を
思い出した
その手を記憶に
留めるために
多くの犠牲を払った

そのために
私は腐敗する権利を
放棄した
周りの真空は私に
死の喜びをもたらす
喉元をゆっくりと通って
胃の奥まで辿り着く

 

私は弱き者のスリッパへの
憎しみを学んだ
十四歳の時だった
十四歳の時だった

歯痛のために打たれたプロカイン
注射の効き目が
未だ続いてる
失望に満ちた午後私は
帰ることができる
君の許に

帰ることができる
帰ることができる

大バザールのここかしこに
見られる濁った水溜りを除いて
私は何処からも私は何ものをも望めない
泥の匂いを嗅いでいる
私は眞に生きた証しがない
灯が消えた冷たい暗闇
こそこそとかくれてする自慰

大酒呑みになった一つの
一つの民族
私を攻撃してくる
アスカルは私を見つめ

この野郎は
結構いけていると
叫ぶしかし
私は形式を
持っていない

それは最後の切り札
それは最後の切り札

私は読んでいる
汗まみれで読んでいる
幽霊が艶やかで
透明な肌色を
浮かび上がらせ
私の目に光を
投げかける巨大な
反射鏡になる
投げかける巨大な
反射鏡になる

 

夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く

夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く

父が家から追い出された
時に帰る場所は
泥の
泥の
泥の寝床

泥の
泥の
泥の寝床

夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く

 

 

◆むかいだいすさんからの詩のお便り(2021/8/21)

ウイグルを代表する若手実力派トップ詩人Tahir Hamut Izgil (タヒル・ハムット・イズギル)の夏に相応しい名詩を一つ。

彼は、1969年カシュガルに生まれる。ウイグル若手詩人を代表するトップ詩人。2016年ウイグル詩人初でアメリカで詩の夕べ「夏は一つの陰謀」を開く。「新疆」芸術学院元教授。『西欧現代文学概論』などの著書と『間と他』などの詩集がある。

 

         「夏は一つの陰謀」

私は汗まみれでアン・セックストンを読んでいる
浮遊する埃が空気を追う
都会の無数の鳥に変わりホームへ飛んでいる
風は
唾を飛ばしながら
あちこちに黴菌を撒き散らす
君は
真に生きたことがない
白い嘴の鴉ではない
赤い芝生でもない
私は第六感を信じない
それは昨日の地下鉄で遭った老婆が口走ったかのように
人を欺く
二人に唯一共通するものは恐怖
聴き慣れた鋼鉄のようなその声は
飲み物のように骨の髄まで浸みこみ
凝固する
山が動くのを見る
テーマを創作することの重要さも感じている
海が燕の巣の上を飛翔するのを見ている
君は私を現実に戻す恐ろしい力
車にぶつかった人形
それは芸術と糞の誠実さ

夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中をよろめきながら歩く
父が家から追い出された時に帰る場所は
泥の寝床

昨日の雨を知らないのか
可哀そうな雨音が未だに枝の間に響いている
己をすべての昆虫類に繋ぐべき
疑いが消えた時
それだけが
ただそれだけが私に自身を破壊する力を与えている
カシュガルのジャーミーの前で
計り売りの大麻があったのを忘れられない
私の語るに値しない子供時代
今日の私は 手を
汽車の窓から延びたあの手を思い出した
その手を記憶に留めるために多くの犠牲を払った
そのために
私は腐敗する権利を放棄した
周りの真空は私に死の喜びをもたらす
喉元をゆっくり通って胃の奥まで辿り着く

私は弱者のスリッパへの憎しみを学んだ
十四歳の時だった
歯痛のために打たれたプロカイン注射の効き目が
未だに続いている
失望に満ちた午後
私は帰ることができる 君の許に帰ることができる
大バザールのここかしこに見られる腐った水溜りを除いて
私は何処からも何も望めない
泥の匂いを嗅いでいる
私は眞に生きた試しがない
灯が消えた冷たい暗闇
こそこそとやる自慰
大酒呑みになった一つの民族
私を攻撃してくる
アスカルは私を見つめ
この野郎は結構いけていると叫ぶ
しかし
私は形式を作っていない
それは最後の切り札
私は読んでいる 汗まみれで読んでいる
幽霊が艶やかで透明な肌色を浮かび上がらせ
私の目に光を投げかける巨大な反射鏡になる

1994年7月 北京