Ninjin Music Blog

オリジナル楽曲の紹介やカバー曲を投稿していきます

夏は一つの陰謀(ハイライト)


夏は一つの陰謀 on Vimeo

以下はむかいだいすさんのお便り

ヒル・ハムット・イズギル氏の詩「夏は一つの陰謀」に作曲していますが、最初に心に閃いた部分だけをアップします。全曲は後日。

 

 

 

●むかいだいすさんより(2021/8/21)

 

ウイグルを代表する若手実力派トップ詩人Tahir Hamut Izgil (タヒル・ハムット・イズギル)の夏に相応しい名詩を一つ。

彼は、1969年カシュガルに生まれる。ウイグル若手詩人を代表するトップ詩人。2016年ウイグル詩人初でアメリカで詩の夕べ「夏は一つの陰謀」を開く。「新疆」芸術学院元教授。『西欧現代文学概論』などの著書と『間と他』などの詩集がある。

 

           「夏は一つの陰謀」

私は汗まみれでアン・セックストンを読んでいる
浮遊する埃が空気を追う
都会の無数の鳥に変わりホームへ飛んでいる
風は
唾を飛ばしながら
あちこちに黴菌を撒き散らす
君は
真に生きたことがない
白い嘴の鴉ではない
赤い芝生でもない
私は第六感を信じない
それは昨日の地下鉄で遭った老婆が口走ったかのように
人を欺く
二人に唯一共通するものは恐怖
聴き慣れた鋼鉄のようなその声は
飲み物のように骨の髄まで浸みこみ
凝固する
山が動くのを見る
テーマを創作することの重要さも感じている
海が燕の巣の上を飛翔するのを見ている
君は私を現実に戻す恐ろしい力
車にぶつかった人形
それは芸術と糞の誠実さ

夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中をよろめきながら歩く
父が家から追い出された時に帰る場所は
泥の寝床

昨日の雨を知らないのか
可哀そうな雨音が未だに枝の間に響いている
己をすべての昆虫類に繋ぐべき
疑いが消えた時
それだけが
ただそれだけが私に自身を破壊する力を与えている
カシュガルのジャーミーの前で
計り売りの大麻があったのを忘れられない
私の語るに値しない子供時代
今日の私は 手を
汽車の窓から延びたあの手を思い出した
その手を記憶に留めるために多くの犠牲を払った
そのために
私は腐敗する権利を放棄した
周りの真空は私に死の喜びをもたらす
喉元をゆっくり通って胃の奥まで辿り着く

私は弱者のスリッパへの憎しみを学んだ
十四歳の時だった
歯痛のために打たれたプロカイン注射の効き目が
未だに続いている
失望に満ちた午後
私は帰ることができる 君の許に帰ることができる
大バザールのここかしこに見られる腐った水溜りを除いて
私は何処からも何も望めない
泥の匂いを嗅いでいる
私は眞に生きた試しがない
灯が消えた冷たい暗闇
こそこそとやる自慰
大酒呑みになった一つの民族
私を攻撃してくる
アスカルは私を見つめ
この野郎は結構いけていると叫ぶ
しかし
私は形式を作っていない
それは最後の切り札
私は読んでいる 汗まみれで読んでいる
幽霊が艶やかで透明な肌色を浮かび上がらせ
私の目に光を投げかける巨大な反射鏡になる

1994年7月 北京

 

「夏は一つの陰謀」の全曲は下記でお聞きください

https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/09/12/204956