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アッラーが巡り合わせたが故に(レヒム・ヤスン・キャイナミ)


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アッラーが巡り合わせたが故に on Vimeo

 

アッラーが巡り合わせたが故に」

(詩 : レヒム・ヤスン・キャイナミ)

 

あなたと出逢った場所で
あなたの死が芽生えるとは
あなたの苦しみと
あなたの嘆きを
癒すために私は
私の死体を置き
涙の雨をその場所に
連れてくる

あなたと出逢った場所で
あなたの死が芽生えるとは
あなたの苦しみと
あなたの嘆きを
癒すために私は
私の死体を置き
涙の雨をその場所に
連れてくる

私たちの間を
隔てる気の遠くなるような
長い年月
長い年月
そこにあるのは
窓から覗く目と
風のように通り過ぎる言葉

そこにあるのは
私たちを飲み込んだ
別離を意味する
固まった血
その血にはさまれた
私たち二人

一つの石が
門の前に立ち止まり
私は私の過去を
その石の上に乗せる

うめくような
重々しい
溜息がこぼれ落ちる
うめくような重々しい
溜息が滴り落ちる
うめくような重々しい
溜息が煌めきながら
散らばる

私たちは
巡り合った故
別れる定めなのだろうか
生まれたが故死ぬ定めと
同じなのだろうか
狂おしく逢いたい想いの
この苦しみの中で
恋というこの病の中で
孤独にならなければならない
定めなのだろうか
定めなのだろうか

あなたが雪となって
降り続けるので
私はひたすらその雪を追い
冬を探す
あなたが小石となり
投げつけられたので
私は卑怯な者になることを
怖れはしない

あなたが死をもって
私のため生きたので
私も死をもって
あなたのために生きる

アッラーが私たちを
巡り合わせたことの故に
あなたがあなたの命を炎に燃やしたので
私の命も
燃やされて灰になることから
逃げはしない
アッラーが私たちを
巡り合わせた故に

アッラーが私たちを
巡り合わせたことの故に
あなたがあなたの命を炎に燃やしたので
私の命も
燃やされて灰になることから
逃げはしない
アッラーが私たちを
巡り合わせた故に

あなたと出逢った場所で
あなたの死が芽生えるとは
あなたの苦しみと
あなたの嘆きを
癒すために私は
私の死体を置き
涙の雨を
その場所に連れてくる

あなたと出逢った場所で
あなたの死が芽生えるとは
あなたの苦しみと
あなたの嘆きを
癒すために私は
私の死体を置き
涙の雨を
その場所に連れてくる

 

原詩:レヒム・ヤスン・キャイナミ
日本語訳詩:むかいだいす
編詩・作曲:historyninjin (2021/4/21)

 

【編詩・作曲者よりの注解】

ウイグル人イスラム教の民です。民族的にはテュルク系であり、同じイスラム教のアラブ系の人々とは言語的にも文化的にも歴史的にも一線を画する人々です。

宗教的な面から見ると、歴史の中で仏教ならびにキリスト教等の影響も色濃くその文化の中に融合しており、日本の文化とも親和性を帯びていると言えます。

原詩の題名「アッラーが巡り合わせたが故に」をそのままタイトルにしましたが、アラブ系の人たちの唱える「アッラー」とウイグルの人々が唱える「アッラー」では私に言わせると少しニュアンスが違うように思われます。

日本文化の万葉集までもウイグル語に翻訳して紹介されるほど日本語に堪能なムカイダイスさんによるウイグル人の詩の翻訳を数十編目を通しましたが、所々日本人の私が舌を巻くほどの言葉使いがなされており、一目を置かざるを得ません。

その詩に触れるほど、ウイグルの詩の文化の深さを感じざるを得ません。

今はもう絶えてしまいましたが、かつて万葉時代、日本では和歌を詠み、送り合う風習があったようですが、それと同じようにウイグルの人たちは今も、詩を詠みそれを手紙にしたためて親しい人らと互いに送り合う風習が文化となって定着しているそうです。

 

今回この詩「アッラーが巡り合わせたが故に」の背景を考えると、深刻になり粛然とせざるを得ません。

中国によるジェノサイドの死の弾圧という政治的状況にがんじがらめにされている中で生じた過酷かつ残虐な事実から編み出された、血が滲み、涙と叫びが込められた詩だということです。

虚飾や文学的に浮薄な装飾はそこに入り込む余地のない世界からの沈黙の絶叫が塗り込められたメッセージなのだということを理解しないと直視できないものです。

真似をすることが不可能なのはいうまでもありません。私はその漆黒を払拭するには、詩に曲をつけたぐらいではどうにもならない絶望的な悲しみを感じています。

 

                           2021/5/29記

                           historyninjin

 

●むかいだいすさんからのお便り(2021/4/18)

ئۇيغۇر شېئىرلىرى ياپۇنىيە ئاسمىنىدا پەرۋاز قىل !

ウイグルの詩よ、日本の風にのって羽ばたけ!
今日は皆さまに東トルキスタンに暮らす天才詩人の一人、レヒム・ヤスン・キャイナミの詩を一つ紹介させていただきます。彼も今強制収容所の中にいます。
日本の皆様、どうかウイグルの詩と文学をを応援してください。

 

※以下ウイグル語の文章

本来は右から左に表記されますが、操作の仕方がわからないのでコピーペーストした表記(左から右)になっております。申し訳ありません。

 

مەن شېئىرلىرىنى بەك ياخشى كۆرىدىغان ۋەتەندىكى نادىر شائىر ھەم قىممەتلىك دوسلىرىمدىن بىرى قاينامىنىڭ شېئىرلىرىدىن يەنە بىرنى ياپۇنچە تەرجىمىسى بىلەن ھوزۇرۇڭلارغا سۇنىمەن .

خۇدا بىزنى ئۇچراشتۇرغانلىقى ئۈچۈنلا...

سېنى ئۇچراتقان يەردىن
ئۆلۈكۈڭنىڭ ئۇنۈپ چىققانلىقىنى كۆردۈم
يېغىۋاتقان يامغۇرلارنى باشلاپ كەلدىم
پەرۋىش قىلسۇن سېنى دەپ ئۆلۈكۈمنى قالدۇردۇم مەنمۇ

ئۇزۇن يىللار ئۆتىدۇ ئارىمىزنى كېسىپ
دەرىزىدىن ماراپ تۇرغان كۈنلەرنىڭ كۆزلىرى قالىدۇ
شامالدەك ئۆتىۋاتقان پويىزنىڭ سۆزلىرى قالىدۇ
بىزنى يېۋەتكەن ھىجراننىڭ لەۋلىرىدە قېتىپ قالغان قان
ۋە چىشلىرى ئارىسىغا كىرىۋالغان ئىككىمىزنىڭ قەدەم ئىزلىرى قالىدۇ

بىر پارچە تاش مېڭىپ كەلگەنچە توختار ئىشىك ئالدىمدا
ئۆتمۈشۈمنى قويىمەن ئۇنىڭ ئالقانلىرىدىكى قاتتىق سۇپىغا
ئاندىن بىر نازۇك شىپىرلاش بىلەن تەڭ بىر لېگەندە پولو قويۇلىدۇ
سۈرلەنگەن ئات گۆشى بېسىلغان،ئات تۇياقلىرى دۈپۈرلەپ تۇرغان
ھەر بىر تال گۈرۈچتىن ئېغىر كىشنەشلەر پارقىراپ تۇرغان...

بىز ئۇچراشقانلىقىمىز ئۈچۈنلا
چوقۇم ئايرىلىشمىز كېرەكمىدى؟
تۇغۇلغانلىقىمىز ئۈچۈنلا ئۆلمەكچى بولغاندەك
ئەسەبىيلەرچە سېغىنىشنىڭ دەردىنى تارتقانلىقىمىز ئۈچۈنلا
سۆيگۈدىن ئىبارەت بۇ كېسەل كارۋېتىدا تەنھا قېلىشىمىز كېرەكمىدى؟

سەن يېغىۋاتقان قارلار بولغانلىقى ئۈچۈنلا مەن قىشنى ئىستەيمەن
سەن يېغىۋاتقان تاشلار بولغانلىقى ئۈچۈنلا مەن قاباھەتتىن قورقمايمەن
سەن ئۆلۈۋاتقان ئۆلۈم بولغانلىقى ئۈچۈنلا مەن ياشاشتىن زېرىكمەيمەن
خۇدا بىزنى ئۇچراشتۇرغانلىقى ئۈچۈنلا
سېنىڭ ھاياتىڭدا كۆيۈۋاتقان ئوتلاردا كۈل بولۇشتىن ھاياتىمنى قاچۇرمايمەن


2016.04.10

 

 

※以下、ウイグル語の日本語訳(ムカイダイスさんの翻訳)

 

アッラーが巡り合わせたが故に」

君と出逢った場所で
君の死が芽生えるのを見る
降る雨を連れて来る
君を労わって育てるために私の死体を残す
長い年月が私たちの間を横切る
窓から覗く日々の目だけが残る
風のように通り過ぎる日々の言葉だけが残る
私たちを呑み込んだ別れの唇に
固まった血と歯に挟まった二人の歩みが残る

一つの石が歩み寄り門の前で立ち止まる
私の過去を石の掌の固い土間に置く
優雅な囁きと同時にピラフが運ばれる
燻製の馬肉が入った馬の足音が聞こえる
米粒から重々しい溜め息が煌めく

私たちは巡り合ったが故に
別れる定めなのか
生まれたが故に死ぬべきと同じように
狂おしく会いたい想いの苦しみを味わったが故に
恋と言うこの病床で孤独になるべきか

君が降り続ける雪の故に私は冬を探す
君が投げられた小石の故に私は卑怯を怖がらない
君が死んでいる故に私は生きることに退屈しない
アッラーが私たちを巡り合わせたが故に
君の命の炎に燃やされ 灰になることから逃げない
2016・04・10

 

追記「ことわき のりと」

https://historyninjin.hatenablog.com/entry/2023/05/21/082531