Ninjin Music Blog

オリジナル楽曲の紹介やカバー曲を投稿していきます

痛み(全曲)


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ヒル・ハムット・イズギル氏の詩「痛み」の全曲を録音しましたのでこちらにアップします。冒頭に全曲を掲載し、各連ごとにその連だけの録音も差し挟むようにしました。どうぞお聞きください。

痛み(全曲) on Vimeo

ウイグルシャマンコシャック詩「アザイム」より

 「痛み」(私の懐は君と共に)


痛み(第一連) on Vimeo

(一)

夜に服を着たまま寝てしまった者

小道に危険な灰を撒き散らしていく者

素足で砂に詩を書く者

赤から黄を分けた者

顔を洗わずに朝餉(あさげ)を摂る者

逢魔が時アッラーを愛することから

解放されなかった者

死は君たちの傍らをすり抜けていった

見たのか

かつて  私は句読点のない場所で生きていた

紙にある黄ばんだシミを唾で拭いたまま

その古い紙  そして死ぬ間際の黒いインクの愛おしい香りの

何という柔らかさ

されど  哀れに思っていた句読点のない文の  バブル

  ミルザそして他の人に

厳かさの故に気が狂うように酔ってしまっていた

今日

骨が折れた左手を包帯で巻いて

痛みを感じることなく

右手に載せた自分の写真を見ている

裏書きの中国語を読んでいる

教えようかその内容を

道端の岩に

腰掛けている静かな女に

太陽の光は彼女の頸に射していた

腰掛けている岩は硬くない  座り易かった

私は君たちに会うために頑張った

血管が膨満し  目が疲れはてた

だのに  君たちは私の痛みにうんざりしたのか


痛み(第二連) on Vimeo

(二)

七歳の子が

蔓の蕾を食べる子が

砂棗(すななつめ)の葉っぱの蜜を食べる子が

白いトウモロコシの枝を食べる子が

酸っぱい植物の根を食べる子が

ハンカチに包まれた一斤の山羊の肉を持って歩いている

鼻血を出している

この子は誰の子  知っているのか

陽光が持ちこたえている空の一片のように

私の周りに集まったのか

君たちはどうなりたいのか

君たちは何になりたいのか

私は何を諦めるのか

私は何をなだめたいのか

私は何を君たちに見せたいのか

私は君たちの傍らを過ぎて行った風を遮った

ああ  風よ  君は私の瞳の母である

私は君に畏(かしこ)まっている

それで  君は私に伝えてくれないのか

毒というのはどんなものなのか

それを触ったら手が震えるのか

一口飲んだら人が死ぬのか

私は君たちに足を向けて

服のままうつ伏せになって寝てしまった

夢で真っ黒な闇を見つけた

それが私を覆った

首に巻きつかれて

脇を這って進んだ

私の太腿の間を這って進んだ

命の間を這って進んだ

私は鈴の花を食べながら

私は棘(いばら)を踏んで狂ったように走りながら

音のない怖れを楽しみながら

口を大きく開けた


痛み(第三連) on Vimeo

(三)

一束一束の光

少しずつ  少しずつの水

一握り  一握りの土

繰り返される痛み

一滴一滴の命

ああ  君たち  私の心で  腹一杯になったのか

 

果てしない線のこちら側に

私になりたい私は再び来た

暗黒から抜かれた刃(刀の左側に点)のように

君たちは私の心から抜けて行った

私は君たちに合図を送る

毎朝繰り返し唱える

私の息で金の編み物を紡ぐ

そして君たちに

階段で固まった足跡を見せよう

 

 

2009年1月  ウルムチ

原詩:タヒル・ハムット・イズギル

日本語編訳:むかいだいす、河合眞

(詩集「聖なる儀式」より)

作曲:historyninjin 2022/1/31


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アーモンド(あめんどう)の花